第二日目(6月12日)雨のち薄曇
この日は東郊外の遺跡巡りを盛り沢山にしようと、小雨だったが早めの朝食を済ませて, 先ず「華清池」に向けホテルを出発。 場所は西安の東25キロ「臨潼」の町である。東西を結ぶ主要街道上にあるゆえ、 往時は日本からの遣唐使なども通過した所だ。 この町の南に「驪山」(りざん)<海抜1256m>があり、その麓が「華清池温泉」で、 今から2700年前の周代に発見され、今でも42度の温泉が沸いている。 唐の詩人・伯楽天が「長恨歌」で「春寒くして浴を賜う華清の池、温泉水滑らかにして、凝脂を洗う」と 詠った場所である。玄宗皇帝はここに宮殿を造営し、離宮とした。 |
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その玄宗と楊貴妃の湯浴みした浴槽跡が最近発掘され「御湯遺址博物館」として公開されている。 この「華清池」は共産党と抗争した蒋介石が張学良に監禁され、のち周恩来によって釈放され、国共合同の対日抗戦を始める切っ掛けとなった1936年の「西安事件」の地としても知られている。当時蒋介石が使用していた建物も、 銃弾痕そのままに保存されている。 公園内の「華清池」そのものは、想像していた程大きくはなく、まして池畔に立っている近年の作であろう楊貴妃の石像は何だか観光用に取って付けた様で、やや興醒めの 感が拭えなかった。 |
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又、華清池公園内の楼閣の多くは清朝の西太后による構築と聞かされたが、私には発掘された玄宗と楊貴妃が実際に使用したと言われる浴槽の方が興味深く、 以前に訪れたイタリアのポンペイ遺跡で見た石作りの公衆浴場や富豪の浴槽などを思い出してしまった。 |
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「兵馬俑博物館」と「秦始皇帝陵」 |
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華清池公園を見終えて直ぐに、今回の第一の目的地「兵馬俑博物館」と「秦始皇帝陵」に向け車を走らせた。 距離にして、始皇帝陵まで5キロ、そこから1.5キロの地に目指す「兵馬俑博物館」(俑抗1,2,3号と 銅馬車抗)がある。 1973年付近の農民が井戸を掘っていて偶然に発見されたのであるが、これが今では20世紀最大の考古学的発見 として世界遺産に登録されている。 確か発見当時は世界的にも注目を浴び、テレビなどでも紹介されたが暫くは木組みの囲いであったのが、 今では鉄筋コンクリートの大ドーム「兵馬俑博物館」の中に収められている。 |
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内容は今更説明の必要もなかろうが、秦の始皇帝の陵墓を守る兵馬俑、つまり陶製実物大の兵士や軍馬の埴輪が 7000体以上整然と埋められていたものが発見され、今尚、ドーム内でも発掘・整備作業が続けられていた。 |
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このドーム内は一応撮影禁止であるが、カメラの持ち込みは禁止されておらず、内部が余りにも広いので、 監視の目を掻い潜って何とか撮って来た。 兎に角、その規模には圧倒されると云うか、どうして、こんな凄いことをやってしまったのかと呆れるだけである。 |
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その上、幸いなことにその日に、この遺跡の第一発見者である、元農民の楊志発氏が来場していると云うことを張君が聞き込んで来た、そこで早速兵馬俑博物館で、写真集を買い求め、その本の見開き頁にサインをして貰ったが、今ではこの地の大変な名士である。 彼は今では博物館に立派な部屋を貰って、その職員として勤めているそうである。又、近郊の農民たちも、世界遺産として世界中から大勢の観光客が訪れる為、道路も整備され土産物店や食堂も多く、観光地として開発・発展し大いに潤っているように見えた。 |
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「始皇帝陵」 続いて始皇帝陵に回った。ここは一辺60mほどの正方形墳丘で現在の高さ76mある。 紀元前210年に始皇帝が葬られた当時、墳丘は115mの高さがあったと言われ、周囲は城壁で固めた広大な陵園だったと伝えられている。 あまりにもだだっ広いので、車から降りて写真を撮っただけに終って昼食に急いだ。 |
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観光地を少し離れた小さい村のレストランを探して貰い、団体客も居らず我々三人だけでのんびり昼食を楽しんだ。味も中々のもので店の若い女性達も親切で好感が持てた。 昼食後、薄日も差す観光日和となり「半坡遺跡博物館」に車を急がせた。 |
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「半坡遺跡博物館」 ここは比較的観光客も少なくゆっくり観て回れたが、木組みのドームの中に保存されている。 6000年前の新石器時代の住居跡である。1953年に発掘が始まった由だが、仰詔(ぎょうしょう)文化期に当たる45に上る竪穴住居跡はじめ原始的冷蔵庫や窯跡、墳墓などが完璧な形で発掘保存され、当時の生活様式を偲ばせてくれる。 |
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「碑林博物館」 半坡遺跡から城内に戻り、碑林博物館を訪れた。南門近くの文昌門城壁に沿った一角にある。 後漢から唐代に掛けての陵墓碑や論語、尚書などの文章を中国書道の原点となる有名な書家の手による、国宝級の書が石に刻まれた碑が林立している。宋の時代に散逸を防ぐ目的でここに集められたものとの説明だった。 |
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王義之、欧陽?、顔真郷、懐素等、書道を志す者にとっては涎が出そうな書家の名が並んでいる。 特に著名な碑は小さい堂の中に収められている。 又、別の棟ではこれらの石碑から拓本を作り売っているが結構な値段である。 多分、書の道を選ばれた方なら一度は訪れられているのだろうと思った。 雨の所為もあってか、外の喧騒を全く感じさせない落ち着いた佇まいの、博物館と云うよりは寧ろ素晴らしい公園でもある。 |
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